無題/蒼木りん
 
一日の終わりに
デニッシュパンを食べたら
甘かった
泣きたくなった
泣き方を忘れたので
泣けなかった
泣くと息が苦しくて
死んでしまいそうになるから
泣くのを止めてしまったのかもしれない
上手く泣けなくて
小さな苦しみは続く
壊れてしまいそうなことが
すぐに壊れてしまいそうなことが
いくつもあって
臆病なわたしは
動けない言葉にできない
壊してしまえば
臆病っていう
ガラスの器を
自分から壊してしまえば
涙もこぼれ落ちるだろうに
あんなに
なりたくなかった大人に
わたしは望んでなってしまった
大人になんか
なりたくないねと
いっていた友と
見た
夕日のような
今日の夕日は
雲の波に溶けていった
子供の甘さと
大人の苦さ
甘いものがほしかった
涙をこぼしたくてしかたない


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