嘘に見える/智鶴
 
夜の湿度が君に似ている
僅か一瞬存在することを許されて
僕の眼を見て哀しそうに笑う
雨の匂いが僕に似ている
君の匂いに忘れられて
君に触れて嬉しそうに消える

君は其処に座ったまま僕を嘲笑っている
君がまだ幻だった頃を思い出して
僕は虚ろに笑う
例えば揺れる意味を見失って
狂おしい湿度が絡み合う度に君を許して

ねぇ君は、何処にもいない
ねぇ僕は、此処にいるのに

夜の狂気が君に似ている
幻と理想の区別もつかないまま
虚ろな顔で僕を殺す
夜の感情が僕を狂わせる
罪を貪って忘れられたまま
現実を騙しても君が欲しいから

君のついた嘘を
僕のせいにしてもいいよ
まだ君は
僕の悲鳴を聞きたがるの?

ねぇ君は、何処にもいない
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