ポピーが手をふる/亜樹
 
ポピーが手をふる
あの頼りない花が
赤いてのひらを
ひらひらさせて

生ぬるく上がる気温に
山の空気が差し込む
一瞬の冷気が
五月の雨になる
吹き降ろす風と
じりじり上がる気温に
意味のない焦燥を抱え
一歩踏み出した私に
ポピーが手をふる
赤いてのひらを
ひらひらさせて

もう帰って来なくていいよ、と

――あの頼りない花が。
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