「五月の風にさそわれて」/ベンジャミン
 

そんな小さなやりとりを
五月の風はさらってゆきます

庭に出て手招きするあなたは
僕が名前も知らない草木の一つ一つの
その先にほっこりとふくらんだ緑色のいのちを
やわらく包み込むような笑顔で
「いつ咲くのかな?」
なんて
僕が答えられないことを知っていてきくのです
「早く咲くといいね」
なんて
けっきょくはまたそっちに目を向けて
僕にはその背中が
眩しくて仕方がないことなんて知らないで

だからというわけでもないけれど
五月の風にさそわれて

僕の部屋では
近くの図書館で借りた植物図鑑が
五月の風にめくられるのを待っています
 
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