貝むらさき/佐野権太
 
くるぶしを浸した
海の底の
遠ざかる砂に
裏返る
また少し君のこと

舞いあがる
風のゆくえに
どんな不自由をみたの
何もない空に
探してる
君の糸口

いくつかの土くれは
指先に
こわして
青く飽和する砂原の
胸に
かえして

やがて
すべてが通り過ぎたあと
細い唄となって
君を流れる


ゆらぎ
ゆらめきながらも
きざむ、呼吸
むらさきの


君の
いちばん安心する
波うち際に
僕の両手を置いておく






戻る   Point(20)