こころに住むもうひとり/湖月
あの人のなかに
暗い眼をした少年を見た日から
わたしの中に刻まれた誓いは
不安定だけども心の底に残っている
同じように わたしの中にも
膝を抱えた少女がいる
深い底まで降りて
わたしは少女を抱きしめてあげるのだけど
あのひとはその方法をしらないから
そこまで降りていって触れてみたいのだ
鋭いナイフの切先みたいな痛さを知りたくて
時間が止まったように 笑ってあげる
「変わらないね」といわれて心の底から安心するのは
変わってしまったら気付いてもらえないんだと
恐れているから
手の届かない場所に居る少年に出会うための
たった一つの通り道
そのために時間を止めた
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