呼吸/乱太郎
砂浜を撫でる乾いた風が
肺から循環する
感傷の毒を洗い流し
ただ瞬間だけを咲かせる
吐く息はいつも
黄痰に鎖を繋がれ
夢の欠片も存在しない
一本の座標軸に
流され惑わされながら
いつまでも
比例級数出来ずにいる自分がいる
*
深く息を止めて
移動診察車に閉じ込められ
知りたくもない
自分の欠陥を写される
二週間後
赤い召集令状が届く
あなたから傲慢の腫瘍が見つかりました
まだ小さいですが
放っておくと
あと一年で全身に転移します
最寄りの宗教団体で診察されたら良いでしょう
*
わたしは青い空をいっぱい吸い込んで
人気のない森の奥の澄んだ湖の底に沈めます
それでもわかってもらえないでしょう
いつもただ優しく微笑んでいるあなたには
ひとりぼっちの蘭の花
咲いていることさえ気づいてもらえない
あなたはいまも何気なくわたしを揺らす風
涙で溢れそうになっているわたしの湖だけど
必ず見つけてほしい
あなたの風にさらわれる日を待っている
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