さつきの街/かのこ
 
春になったら
当たり前のように聞こえてくると思っていたんだ
にわか雨と土の香
遥か陽射し、青々とした歌

太陽が落ちた場所から染まっていく
冷えた腕を隠す前に
呼ぼうとして心に刻んだ名前があった
踏み出す一歩があまりにちっぽけで

切ないなあ、切ないなあ
伝えたいだけで切ないなあ
そんな歌をうたっていて
ここには誰一人いなくって

雨が落ちた場所から染まっていく
離れようとする街の片隅の
いつか思い出や紫陽花の色
踏み出す影がまた伸びていって

切ないなあ、切ないなあ
伝わらないだけで切ないなあ
そんな歌をうたっていて
ここには誰一人いなくって
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