風景描写 〜初夏の日〜/あ。
風景描写。
足首ほどの深さの川には
この時期多くの人が集う
或る子どもは魚を追いかけ
或る男女は飛び石を渡り
或る老人は側で居眠りをする
風景描写。
一両編成の青い電車は
満員になることが殆どない
きっちり一時間に一本のペースで
かたことリズミカルな音で走る
風景描写。
子ども達の笑い声と男女の話し声
老人の軽いいびきと川のささやき
そこに金属の音が混じる
少し離れた鉄橋の上を走るのは
たった一両の青い電車
全てのものがしばし見入る
風景描写。
かたことと錆色の鉄橋を渡る
単調な眺めからひととき抜け出す
乗客はほんの少し窓の外に目をやる
遠く離れた下のほう
川べりで子ども達が大きく手を振る
電車からも笑顔で手を振り返す
風景が、重なる。
わずかばかりの時間
優しいひとときを
こころとこころの交わりを
人々はそっと感じる
戻る 編 削 Point(5)