なつのこどもはやかれてしまった/亜樹
 
 生乾きの芥子の花が
 白い煙をもくもく出して
 修行僧のように黙り込んだまま
 燃えているときに
 わたしはただ
 真新しい注射器のことを思った
 腕に針が刺さるとき
 いつもわたしは目を瞑るので
 細い血管に挿入される液体の色を
 結局いつも知らず仕舞いだった
 白い煙はもくもくと
 小雨の降る中上っていって
 重たく湿った五月は置いていかれる
 
 モルヒネの赤
 モルヒネの赤
 モルヒネの赤

 もう何も見えない
 
 
なつのこどもはやかれてしまった


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