彼らの哀しみ/吉岡ペペロ
 

アメリカ人たちと会議をするといつも
合理性のなかに弱さが同居しているのを感じる
それは金融危機の起こる前からの印象だ
彼らの言葉にはまず結論がある
彼らの言葉を使うとき
僕らは結論から話すのではない
主語と動詞を発しているだけだ
結論からしか話せない彼らに
僕はなぜだか哀しみを感じてしまう

彼らはいま顔がふやけている
病にかかった犬猫のような目をしている
唇だけが薄く締まっているような気がする
それが金融危機のせいに見えるのは
僕の毒されたフィルターのせいだろうか
1番を走り続けた優等生が
中二の秋頃から成績がガタ落ちしたような
そんな見方は彼らに失礼だろうか

僕はこいつらが好きだ
こいつらは頑張ってるよ
会議ではPDCAを一生懸命回している
野球部のベーランみたいに
一生懸命システムを反復している
僕らだけでそれをすると借り物の衣装のようだけれど
彼らのそれにはいつも惚れ惚れとしている
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