陽炎/柊 恵
 
私は二つの中国の面を持っている。
父の形見、とても大切なものだ。
陰は白、陽は黒。
こうして手にしていると不思議な力、大きな力を感じる。
深い謂れを父から何度も教わったのだが…、
白面をチナの棺に納めよう。




ギー!ギー!ギー!

うるさい鳴き声に起こされる。
椋鳥が軒下に巣を作っているらしい。

これで3日連続か?
毎日、同じところで目が覚める。

夢の中では確かに存在する「中国のお面」。
当たり前過ぎるほど知っているのに思い出そうとすると記憶は消える。
命と誇りのお面…。

「何か考え事?」

妻の声に我に返る。

「あ…いや、気になる
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