水辺の日のために/小川 葉
 
 
 
水の中には
君がいるのだろう

めびれを使って
泳いでいるのだろう
えら呼吸を
上手にしながら

僕はまだ
顔を洗うことも怖くて

人は
そのえらで呼吸し
そのひれで泳ぎ
彼や彼女を
ここへ導いてきたのだ

君がめびれを使うように
僕にもおびれが使えるはず

えらを塞ぐと
洗面器の水の中
金属音がこだまする

君を抱いてみたかった
ひとつに
なりたかった

ひとつの魚になって
ひれを持つ
君と僕とが互いを失う

ひとつの子孫が
水辺を迎える
その日のために
 
 
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