Utopian/水島芳野
君がこの白地図を撫ぜたときに
世界が始まる気がしたんだ
ほんとさ。
悲しい幻に似た
鬱屈した午後の空気
燻ぶり始めた誰かの夢が
君の首筋を冷たく伝うときは
呼ぶといい
ああ、ユートピア
どこにも行けない
どうしても教えてほしい答えがあった
だけど世界は止まらないから
ああ、君と
どこまでも行きたい
ああ、ユートピア
どこにも行けない
君の舌先が掬いあげた
冷たさの行方を
目隠ししてかくすよ
ああ、君に
教えてあげたい
すきとおった炎は弾けて
陽炎みたいに凍えてく
痛みなど吐き出していいから
澄んだ空気は思いっきり吸い込んで
ゆこうよ
ああ、ユートピア
どこにも行けない
ああ、ユートピア
行かなくちゃいけない
どこかへ。
ああ、君よ
どこへ行くの
どこへ行けばいいの
ああ、
ああ。
答えてほしくないよ。
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