「 猫ノ薬 」 /服部 剛
 
誰もがきっと探してる 
心の穴を埋める 
たった一粒の薬を 
誰もがきっと求めてる 
この世の果ての薬局にいる 
あの不思議な薬剤師を 
群衆に紛れた君が 
ビル風に飛ばされそうな心を 
(コートの内から漏れそうな子猫の鳴声を) 
抱き締めながら 
傾いた姿勢で歩いているのを 
時折僕は 
街の何処かで思い出す 
(街中の隅々から無数に漏れる子猫の鳴声を) 
僕はあの不思議な薬剤師ではないけれど 
遥かな昔、一度だけ 
遠い旅先の砂丘にぽつんと建つ 
古びた小屋の薬局に行ったことがある 
碧(あお)い眼をした薬剤師は 
僕の来るのを 
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