忘れるとは、刻み込むことだ/あ。
 
光を認めたときから 
歩き始めている
最初の頃は 
目に見えるもの全てが 
新しくて 
眩しくて 
喜びに満ち溢れて
時の流れと共に 
すっかり見慣れてしまい 
踏み出しているこの足は 
何歩目かもわからなくなり 
次第にこころは 
良くも悪くも 
ふり幅の大きなものしか 
刻み込まないようになる 
更に時は流れ 
歩いた数だけ 
刻むべきものは増える 
こころの大きさには 
限界があって 
刻む場所がなくなると 
古傷を覆い隠して 
刷り込もうとする 
そうやっていつしか 
大切であったはずのものが 
苦しかったであろうことが 
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