雛の赤/亜樹
雛が巣から落ちた。
高い軒から、コンクリートに叩きつけられた一羽は
ぴくぴくと口を開き、その奥の赤さを私に見せ付けてから
そのまま動かなくなる。
私がただ馬鹿のように立ち尽くしていると
巣からまた一羽雛が落ちる。
うまい具合着地ができたらしいそれは
雨上がりの5月の風の冷たさに震え
もう動かない兄弟に寄り添った。
その小さな胸は
ばくばくと波打っている。
そのささやかなぬくもりは
もう動かない兄弟から逃げようとする熱を
必死に引き止めていた。
ああおまえは生きているね
ああおまえも生きているね
小さな雛が口を開く
その奥は赤い
同じように赤い
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