可愛いいワンピースを着た黒いマネキンは/雨野六也
可愛いいワンピースを着た黒いマネキンは、スカートの中で溶けてはいたが悲しい程に溢れる事はなかった。水を張った床には流木が目立つ。歩く人は皆、無言だ。うるさいのは鳥だけで、格子の向こうは涼しそう。
左腕を上げたまま、動かないのか動けないのか、行く手を遮るだけの気流はどこへ行っても売っていない。
続けば続くだけ、重なるなら重なるだけ。
分裂したがる者は多く、また薄さを認める。
しなやかでいたいが為に、強欲であり、捨てる物など余りある。
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