夜に走る/たもつ
 
からない
そもそもキウィに感情があるのかすらも

キウィの羽が退化したのは
ニュージーランドに天敵がいなかったからだと言われている
今、こうして夜に走っている小沢君は
進化している途中なのだろうか、
あるいは退化している途中にあるのだろうか
空を飛びたいという人間の願望は
航空機の発達によりかなえられた
もし、人間が自分で飛びたいという願望を持ちつづけ
各世代が両手を羽のごとくバタバタさせていたら
空を飛べる日がくるのかもしれない
両手が翼に進化するということはその一方で
手としての機能の退化を意味する
両手を使って食事をすることができなくなった人間は
やがて、くちばしを持つことになり
人間は鳥に近づく

そんなことを考えることもなく
小沢君は今日も夜に走っている
いつの日か小沢君の子孫が
空を飛ぶ時がくるのかもしれない
もはや大切なものを抱えることができない
翼となった両手を広げて
遠いニュージーランドの空に
キウィがはばたくのを聞いて



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