はるか/木屋 亞万
はるかはさめざめ泣いていた、どうして泣いているのか尋ねても何も答えてはくれない、黙って首を横に振るだけだ、それは違うという意思表示ではなく、話し掛けるなという拒絶だった、誰でも一人になりたい時はあるだろうし、余計なお節介は迷惑でしかないだろうから、いつもならば黙ってこの場を去るだろう、話し掛けること自体しないかもしれない、しかし彼女が泣いている場所を考えるとそうは言っていられない、はるかは僕の瞼の裏で泣いているのだ、最初に現れたのは4月の終わり頃だった、すべての仕事を終えた僕は、あとは静かに眠るだけとなった、そのときに目の裏の闇に吸い上げられるような感覚を受け、はるかの背中が目の前に現れた、白いカ
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