春の音/瀬崎 虎彦
 
風を凌ごうと咄嗟に
破り捨てた五線譜でビバークする
知っているよ
その風の強さを
その風の冷たさを

君の涙が乾いていく

音楽の軽さ ゆるやかに
流れるように声を重ねて
君の痛みを記憶してくれる
共感するための和音がある

詩は詩人のためにあるのではない
詩は(すくなくとも
僕の詩は)すべて
今 泣きそうな気持ちでいる人のためにあるので
今 君が悲しくないのなら
それは通り過ぎてかまわないもの


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