風ひとつ/フミタケ
風のにおいが愛の記憶を
ふいにくすぐる
手探りみたいにひろい夜を
小さなサーチライトひとつで
それぞれ欠けた月
甘く噛み砕いて
帰れない二人を残し
だんだん溶け出していく
星と街のともしび
ちいさな声で何かつぶやく
おやすみの街で
細くしなやかな祈りの糸を
目抜き通りから路地へと
息を燃やしていく
それだけで
電波はムスーに火の車
だんだんと空に
淡いラインが伸びてにじんでく
風がまたひとつ
僕らの体温に触れた
赤 青 緑 きれい
すすめ とまれ 眠れ たちあがれ
それぞれ欠けた月
甘く噛み砕いて
電波はムスーに火の車
だんだん溶け出して
淡いラインが伸びてにじんでいく
風がまたひとつ
僕らの体温に触れた
戻る 編 削 Point(11)