愛の言葉/小川 葉
 
 
 
あんたなんかね
あの時あたしを
見捨てればよかったんだよ

三十半ばを過ぎていた
あの時僕は妻と結婚した
僕の意思で子供をつくったために

安定した職に就いている
幼なじみと
今の妻を見捨て
結婚しようと考えていた時が
同じ頃にあった

あの時
ろくに恋もしないまま
幼なじみと結婚していたならば
いったいどんな未来が
今になっていたことだろう

妻と結婚して
死ぬほど働いている
本当に
死ぬほど

幼なじみと結婚してたら
僕が死ぬほど働く今なんて
なかったのかもしれない
だからそれでは
自分がだめになっていく
気がして
妻と
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