駅・紙屋町/たりぽん(大理 奔)
 
半世紀も祈り続けて
鳩が太っていく
公園の木は
故郷から引き離された子供のように
ぽつん、ぽつんと育って

生きていこうとする力に
種類なんか無くて
他人の生き様を非難できない
太った鳩が行く
ただ鳩は祈るのだ
僕を喰わないでください
僕を殺さないでくださいと

  みんなが僕のように
  怯えて、祈ればいいのだね
  みんなが、よわければいいのだね
  公園に植えられた木々とか
  太った鳩のように

あの夏の焼け焦げた街を
ゴトゴトと走った電車が
今日も僕を乗せて走る
いくつかの分岐装置(ポイント)を乗り越えれば
鳩の住処がみえるだろう

どこにもたどり着かない事を
恐れてはいけない
僕はただ、そのやり方で
やはり生きていこうと思う
本川を渡ってわずかな勾配を下ると
僕を乗せた電車は
十字路を左へと軋んで行く

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