駅・紙屋町/たりぽん(大理 奔)
半世紀も祈り続けて
鳩が太っていく
公園の木は
故郷から引き離された子供のように
ぽつん、ぽつんと育って
生きていこうとする力に
種類なんか無くて
他人の生き様を非難できない
太った鳩が行く
ただ鳩は祈るのだ
僕を喰わないでください
僕を殺さないでくださいと
みんなが僕のように
怯えて、祈ればいいのだね
みんなが、よわければいいのだね
公園に植えられた木々とか
太った鳩のように
あの夏の焼け焦げた街を
ゴトゴトと走った電車が
今日も僕を乗せて走る
いくつかの分岐装置(ポイント)を乗り越えれば
鳩の住処がみえるだろう
どこにもたどり着かない事を
恐れてはいけない
僕はただ、そのやり方で
やはり生きていこうと思う
本川を渡ってわずかな勾配を下ると
僕を乗せた電車は
十字路を左へと軋んで行く
[グループ]
戻る 編 削 Point(12)