彗星、わだつみの聖母/小池房枝
彗星が氷塊だということを
私はわりと気に入っている
いいとか
わるいとかいう話ではないけどね
氷塊なら
何だかひょうきんそうだし
つまらぬ誤解も氷解しそうだ
彗星がもし岩塊だったら
なんだか頑固そうだし
団体で押し寄せてもきそうで怖い
汚れた雪だるまも
空を吹っ飛べば
あんなにも
ずいぶんと壮大な尾を引くものだ
路面も何もない宇宙空間
風に煽られて
砂埃立てて突っ走っるならではの
置き土産こそ流星群だ
かつては地球も雪だるま
していたことがあるそうだから
余計に近しくそう思うのかもね
北国や雪国では
春になるまで
一度創られた雪だるまは
一冬を通じて雪だるまであり続けるけれど
春には春の雪だるま
宇宙の果ての
雪だるまの国へお帰り
オールトの雲という
彗星の故郷へお戻り
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