おしきせ/nonya
 

せっかく森を着せてあげたのだから
木漏れ日のように微笑みなさい
せっかく草原を着せてあげたのだから
そよ風のような声で話しなさい

あなたはアミメキリンであり
トムソンガゼルであり
フクロモモンガであるわけだから
血の滴るような肉やギラついた脂で
服を汚してはいけません

中途半端な中間色なのだから
あなたが何かを叫ぶ必要はないのです
安っぽい木綿の手触りなのだから
あなたが誰かに勝つ必要はないのです

その服はさりげないさりげなさと
不自然な程の自然体と
涙ぐましい涙もろさを
丁寧に織り込んで作り上げた
私の一世一代の自信作です

それなのにあなた
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