オカリナの吹く森/乱太郎
 
   どこから
   ともなく
   流れてくる
    なつかしい調べ

さえずる小鳥も
枝の上で目を閉じ
一匹のシマリスは
頬を膨らまして
クルミをそっと地面に置く

  (・・・・・・
    誰もいないはずなのに
   人の影さえ見当たらないのに
   ・・・・・・)

透けた肌の小さな川も
控えめに渡ろうと
ときおり
何かしら?と
アユが飛び跳ねて
水面が打ち鳴らしている

生い茂った樹海
陽射しが白い幕となって垂れ下がり
老いて崩れたマツの大木には
濃緑の苔が新しい命を生やしていく
[次のページ]
戻る   Point(13)