光の夜道 /服部 剛
 
友と杯を交し  
日々の想いを  
語らう夜に  
酔いどれて独り  
家路を辿る  
夜の道すがら  
何ヶ月も同じ場所に坐り  
路傍の石と化した  
家無き人の  
汚れたシルクハットの  
歪んだ凹みに  
酔いどれは  
幾枚かの小銭を  
投げ入れた  
深く頭を下げる  
家無き人を通り過ぎた先に  
電信柱に寄りかかる  
恋人達が互いの愛を  
密かに確かめ合っていた  
路傍の石と化した人  
と  
身を寄せ合うふたりの  
間の  
街灯に淡く照らされた夜道を  
酔いどれは  
夜風と共に流離いながら 
[次のページ]
戻る 編 削 Point(9)