4/21の記憶装置/夏嶋 真子
 

わったのに
どこにもないんだ


薄れて消えかけていく
キミへのすべての感情のかわりに
なつかしさが
ひたひたと
すみずみをみたしていく


この喪失は幸福と同義




4/21が来るたびに
あのときキミにもらった
オルゴールを鳴らす


コレは記憶の再生装置
キミのことを思い出すための
一年に一度の数十秒は
あまりに短くて


リピート 
もう一度だけ
ねじをまく


こぼれた音に
シナプスが接続されて
短い映像がにじんでる


あれはまだ知り合ったばかりの頃
わたしはキミに聞いたよね



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