「やさしい唄をきかせてください」/
ベンジャミン
そのままずいぶんと時が経って
あれが記憶だったのか夢だったのかも思い出せない
僕はそのまま
何か大切なことをききそこねて
いつも心の中に不安をひそませていたのだと思う
両手で耳をふさいでも
ざわめきのようなものしかきこえない
そんなとき
僕はすこしだけ悲しい詩を書きたくなる
僕はすこしだけ悲しい詩を読みたくなる
そんなとき
あのときあなたがきいていたのは
きっと
やさしい唄に違いないと思いたくなる
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