「やさしい唄をきかせてください」/ベンジャミン
 

そのままずいぶんと時が経って
あれが記憶だったのか夢だったのかも思い出せない

僕はそのまま
何か大切なことをききそこねて
いつも心の中に不安をひそませていたのだと思う

両手で耳をふさいでも
ざわめきのようなものしかきこえない

そんなとき

僕はすこしだけ悲しい詩を書きたくなる
僕はすこしだけ悲しい詩を読みたくなる

そんなとき
あのときあなたがきいていたのは

きっと
やさしい唄に違いないと思いたくなる
    
戻る   Point(12)