書簡の柩/蒸発王
 
彼女の寄越す手紙には
決まって
花びらが添えられていた

『書簡の柩』


それは時に
桔梗であり
朝顔であり
胡蝶蘭であり
種類は定まらず
時には花びらだけでは
何の花か解らないものもあったので
彼女からの封書を開ける時には
小さな植物図鑑がお守りになった


いずれにせよ


それらの花は

外つ国で暮らす
彼女からの
季節の贈り物であって
海を隔てた私に
彼女を感じさせるものであった

不器用な彼女は
文章は言葉足らずなものの
花びらの色や形
言葉を調べるごとに
手紙よりも雄弁に
それらは彼女の心を語った

私も真似事
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