日曜日の台所/草野春心
 


  日曜日の
  台所
  きみは皿を洗う
  その手はぼくから見えない
  春の水はきっと
  未だつめたいだろう



  形のないものは
  流れる
  痛いほどの感情も
  重ねた温みも
  やさしさも



  時折
  ぼくに
  後ろを向かせるものがある
  それは残酷なほどの
  弱さだ
  妬みだ
  甘えだ



  一人だということ
  時は進むということ
  生きれば死ぬということ
  ……あふれるほどの当たり前を愛する
  責任がぼくにはある



  きみは皿を洗う
  その背に
  誇りさえ負って
  春の水はきっと
  未だつめたいだろう


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