新学期/瀬崎 虎彦
生彩を欠いた蝶の羽
五月を前にはらりはらり降り下り
僕は教壇の上から
少女達が浪費するかけがえのない時間を見ていた
どんなに愛を求めても
それは手に入らない
母を喪った友人が
人間は一人なのだというとき
それは孤独で寂しいということでなく
楽しい時にも人は一人なのだと
どんなに愛を求めても
それは手に入らない
不規則動詞の活用の練習まで
あと三週間はかかるだろう
僕の無益なお喋りに付き合ってくれて
眠ってしまう少女がいても誰に責められよう
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