再起動のパルス/かのこ
 

朝が墜落する前の静けさに
私とあなたは手を繋いで
ただ狭いベッドにぶら下がっていた
午前五時、東京という街


徹夜明けで、熱のひかない目蓋
ピンク色の境界線がぼやけている、口唇
珈琲を淹れて、これを飲み干したら
そろそろスイッチを切り替えないと、いけないね


四六時中つけっぱなしのパソコンの画面に
浮かんでは消える文字
人と人のあいだにある言葉が
こんなにも尊い理由なんかは、今更になって気づいたこと


点滅する主電源のランプと、いつもより緩いまばたき
そろそろこの部屋にも朝の光が突き立てられて
空気のように肌に馴染んでいた、振動音が
無闇矢鱈に、存在感を放ち始めるから


再起動のオプションを選んで
Enter、Enter
行こう、朝の通勤電車の波にもまれて
あなたの息衝きなど忘れたような、街に繰り出す
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