瓶詰めの森/本木はじめ
る
ピアノ弾く君の姿を閉じ込めて水滴落ちる洞穴のなか
水面に僕らふたりの影だけが流されまいと揺れているだけ
苔むした岩に寄り添い目を閉じるあなたの森が目を覚ます森
逃げ出せば追いかけてくる村人のたいまつばかりが咲いている闇
残されし時間は沼に身を沈め鳥の声など聞いていようか
廃屋が森の一部となるように僕らふたりも森とかすよる
ダムの底深い樹海に置き去りの墓石に書かれし僕と君の名
よみがえる瓶詰め地獄ふたりして海の波間を漂ひしとき
瓶詰めの森を転んで割りました都市高速を疾る花々
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