真夜中の散歩道/小川 葉
 
 
 
暗闇で
手を繋いで歩いていた
手首だけになって
手首からその先は
僕のようで君ではない
魂になったように

君の息遣いが聞こえる
楽しそうに
何か話してる
僕も何か答える
何かを何かとして
今この時を
記憶しようとするけれど
うまく出来ない
僕はただ曖昧に
君の手を時々強く握りしめ
君もまた同じ気持ちであるように
そうするのだった

いつの間に
川を越えていたのだろう
橋もないのに
僕らは不思議に思いながら
いつか聞けばいいさと
楽しそうに
何かを話すことに夢中だった

朝になるまで歩いた
手首しかない魂が
朝日に照らされ
その姿を明らかにする

恋をした君の
恋をした僕の
手首からその先の
腕や足や肩
目も鼻も口も
まるで人のように

藍色の
懐かしい景色を眺めていた
今この時を
かつて経験したことがあるような
そんな気持ちがあることを
恋をして
はじめて僕らは知った
 
 
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