時の旅行/蒼木りん
あなたのタイムマシンに乗せて
セピアの光の中に つれて行って案内して
オーロラの道を通って 斑雲の中にぬけ
蒔絵のような地の上に ふわりと落ちて 街中を彷徨い歩いても
精霊みたいに 二人だけは見えない
詩人に変化したあなたが 虚ろ気に呟けば
その口元から文字となって 白いページに貼り付いていく
あなたの指差した花の絵は キャンバスから抜き出て
こぼれる花びらをひろげ 枯れてそして 実をつける
手を繋いで離さないでいて 疲れたから
高い 高い塔の天辺に腰掛けて
遥か遠すぎて 煙る未来の地平線を
黄昏の鐘の音とともに しばらく眺めていよう
未来にはまだ 踏み出す勇気が 誰にも無いから
実態の無いあなたと 志の無いわたしと
いまだけは 同じ時の旅行
ひと時 肩を寄せて 繋がり合って
退屈と失望とを埋め 曖昧な欲望を満たそう
(2003,)
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