桜の花はあまり好きじゃないが/水町綜助
 
発音は銀色に
ぎらぎら光る手すりの曲面だとか
ビロードの毛羽立つ座席の
柔らかなスプリングだとか
陽射しを受けて鏡のように
ホームに立つ自分を映してしまうような
ガラス窓だかに当たって
曲がるか跳ねるか染み込むかして
欠けるか割れるか砕けるかして
てんでんばらばらに
違って聞こえるんだろう

電車を
降りていってしまった
ホームからは眩しすぎて
電車の中を見ることができない
車窓からは
川沿いの道が見えて
桜の花のようなものが
綿雲のように咲いているが
僕にはよくわからない
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