生きる/見崎 光
 

夕霧が陽を囲む

疲れた眼には
輪郭をもたない橙が丁度いい


刻々と沈み
刻々と色を変える
夕霧が急かすものだから
なおのこと
陽は優しく暮れる

力の抜けた肩には
滲んだ橙が丁度いい


飛行機雲さえ穏やかに
すっかり暖かくなった風を横切る
夕霧と遊ぶ陽に見とれた

つられて軽い足取りには
柔らかにぼかされた橙が丁度いい


忘れそうになるゆとりを
夕霧は知っている
照りつけるばかりの陽では枯れてしまうことも…だからこそ、こうして
調節しながら静かに
明日へと命を繋いでいるのだろう




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