幽霊/夏嶋 真子
ると 私は桜そのものになった
私が一歩踏み出すと乾いた地面からこんもりと花びらが湧き出し
遥か遠く 次に桜が咲く街の春まで続いた
私がふうっと息をはくと 花びらは私自身になって空に舞い上がり
遥か高く 眼下には桜前線が見える
私は空を漂いながら幽霊に何気なく核心を尋ねる
「桜は なぜ儚い?」
この星に咲くすべての桜花を瞳にして 少女は私に向き直る
「儚い? 一つの桜の樹木はあなたと同じくらい長い時間を生きるの
わたしを儚くするものは人」
「人が?」
「わたしはたった一粒の種さえも残すことができないの
この地上に咲くすべての
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