ガニメデからブラッドべリへ愛を込めて/aidanico
 
夜が明ける。見渡された地上には煌々と赤い光が射し込んでいる。もう四時だ。傾斜した山肌を仰ぐようにして羽を休めようと舞い降りた地上で何かに躓いた。カリ、という石にしては有機的な音だった。足元に転がっていたのは卵の殻であった。何かを書きなぐった紙の切れ端が割れ目から覗くようにして此方を向いていた。あまりにその視線が力を放っているので無視するわけにもいかずに話しかけると、目玉も無いのにその手紙は此方をぎっと睨みつけ、そして書き殴られた文字は紐解くようにしなやかに乖離して網目をつくり覆い被さる。中は窮屈な様でいてなかなか居心地がよく、其の内山頂まで連れて来られる頃になるとうとうと眠気を帯び、眠りに落ちた。杯に葡萄酒が注がれるように、熱をもった橙が町を染めていく。右足はもう浸かりはじめている、もう海は動き出す。太陽が昇る。
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