男はつらいよ/北村 守通
 
 寂しいものです。
 せっかく高知に帰ってきた一年目の春、結局花見に行くこともなく桜は散ってしまいました。まぁ、花見に行くのも多分、一人だったんだろうけれども。夜が仕事のボクは、どうしても周りの人たちと時間が合うことが少なくて、その都度お誘いを丁重にお断りしなくてはいけなくて、ちと辛いところだったりもする。
 さて、そんな夜の仕事を終えて帰路につく際にちょいと寄り道、小腹満たしてやろうかな、だなんてこともやっぱりあるんだけれども、そうしてお店に入ってみると魔性の薬がたんまりと体内に注入されて、赤い顔して視線の定まっていない先客達のすぐ側に席が構えられたりもするんですな。
 そうしますと、聞か
[次のページ]
戻る   Point(2)