『野良猫の掟』/東雲 李葉
こう。
引き止めようと出した右手が君の生き方に対する侮辱でも、
これから先も傍にいられるなら強引にでも掴むべきだった。
それが僕の独り善がりでも、
束の間見せた幸せな顔をいつまでも君にしてほしかった。
君がいなくなってから時間と年だけ食っていき。
天気予報を気にしながら僕はいつでも窓を開けておく。
君の瞳は今でも僕を映してくれるだろうか。
あの日差し出せなかった大きな右手が君の毛並みを思い出す。
さよならはとうに飲み込んで新しい言葉を用意しているから。
野良猫の掟が絶対でも会いたくなったら帰っておいで。
暖かい寝床も甘いミルクも自分勝手な僕も待ってる。
だからいつでも、君が望むなら今すぐにでも。
首輪なんて要らないから僕らだけの口約束を。
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