孤独なジョージ/亜樹
ほこりくさく薄ぐらい部屋の隅っこで
孤独なジョージ(注:ガラパゴス諸島に生息するガラパゴスゾウガメの亜種の最後の生き残りの1頭の愛称。英語だとLonesome George)がキャベツを食む音がする。
世界でたった一人だというアイデンティティ。
ジョージは気にせずキャベツを食ってる。
おめでたいことです
ジョージに子どもが生まれるそうです
おめでたいことです
ジョージは今日も一人きりしかいないのに
ねえ、ジョージ。
ご存知ないのですか。
卵は結局
割れもしないまま
どろどろに腐ったそうですよ。
ねえ、ジョージ。
ご存じないのですか。
あなたは今日も
世界で
たった一人なんですよ。
誰もいない部屋で
孤独なジョージがキャベツを食む音がする。
1+1が2にならないことを
ジョージはとっくに知っていた。
世界でたった一人だというアイデンティティ。
そんなものには見向きもせず
孤独なジョージはただキャベツを食べている。
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