裏町影/石川和広
親を恨んでいるのは、わたしですか
モノローグ
あんたであるということを、認めれば楽になれると
京都の裏町の、将棋うちのおやじはいう。
へんだな、その歩の動き、そう歩くこと
進めないのだって、確かなことなんだ
暗い軒下
静かな明かりが蝋燭であることが
ちらちら揺れることが
風に私と共に、ともに触れている。
病めること
を
止めること
は
出来がたい状況
梶井基次郎だって裏町影に追われていたんだぜ
石畳を濡れた中を走るしかないじゃないか
憑かれた者は
肩を見知らぬ男にぶつけ
それすら孤独の碁盤の目には
ひとつの温もりだ
ある日空は絢爛たる城
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