草燃/
瀬崎 虎彦
天を衝くビルの頂から
見知らぬ異邦人の心まで
六分儀で測りつくせる
幻想が草々と繁茂する
浮力の発見は僕たちを
近づけたか遠ざけたかして
でも根本で敵と味方は
分かり合うためにも血を流す
そうでなければ拭えぬ
簡単に和解できる世界なら
どれほど多く人が死に
悲嘆に詩を書いたかさえ
贖えないから
書き残したいことは
すべて余白に漂う沈黙で
想像力にガソリンを
吹き込んで他人の絶望に
目を凝らす春
戻る
編
削
Point
(1)