草燃/瀬崎 虎彦
 
天を衝くビルの頂から
          見知らぬ異邦人の心まで
六分儀で測りつくせる
          幻想が草々と繁茂する
浮力の発見は僕たちを
          近づけたか遠ざけたかして
でも根本で敵と味方は
          分かり合うためにも血を流す
そうでなければ拭えぬ
          簡単に和解できる世界なら
どれほど多く人が死に
          悲嘆に詩を書いたかさえ

       贖えないから

書き残したいことは
         すべて余白に漂う沈黙で
想像力にガソリンを
         吹き込んで他人の絶望に

       目を凝らす春
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