遠景の美/三之森寛容
潮風は冷たく
大工は今日も砂浜で
近くて遠い
憧れの離島を
眺めてる
島へと続く海は
荒れ狂うばかり
岩場のセイウチは
「おまえには無理だ」
「海を汚(けが)したことを」
「風は知っている…」
天を仰ぐ
綺麗に流れる輪郭線
島を象徴する
二つの峯
峯と峯を繋ぐ
山脈は
美しい弧を描く
もし天国が存在するなら
もし神が存在するなら
あぁ…風はまだ
島へと吹かない
誰も足を
踏み入れた事の無い
未知の島
大工は冒険家気取り
潮風に乗って香る
島の匂いに
胸を高鳴らし
木舟を造る
手を伸ばせば
届きそうなのに
行きたい行きたい
行きたい
あの美しい島へ
きっとあの島は天国
神はきっとあの島に
あぁ…風はまだ
島へと吹かない
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