鳩/浅井実花
 
この両腕で抱き締めてきたもの
大事に大事に持ってきたもの
気がつけばみな鳩に変わって
飛び立ってしまった

あまりのあっけなさに
少し笑って、少し泣いた

はた、と立ち止まると
夢や希望やはたまた絶望などが
ころころと転がっていて
私はまたそれを抱き締める

墓場まで持っていく嘘や
誰にも言えない心の奥底の部分
そういうものをどんどん抱き締める

私はいつも孤独を恐れて
何かを抱き締めていた
抱き締めずにはいられなかった

両腕はいっぱいになって
私は満足気に歩いていたけれど
これらもまた
鳩になってしまうのだろう

空を仰げば無数の鳩たちが
まるで私を笑うようにそこに居た
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