Utopia/aidanico
 
話がまあ長いのなんのって。だから俺はトイレに行く振りだとか、お茶を濁すようにピースに火をつけて、なんとか形だけの相槌でコトを澄まそうと何時も考えているのだけれど。何かを探すように大きく飛び出した目と、神経質そうな細くて薄い眉は哲学者というには余りにも似合いすぎているのだけれど、運命のいたずらか彼は木工、頭とは無縁の職業である。入り組んだ工事現場でヘルメットを被りながら休憩時間に作業場でニーチェなんて広げる奴がどれほど迷惑か、少し考えれば誰だってわかることだろう。まして作業を任せようものならば木材をひとつひとつメジャーで測りながら切ってゆくものだから、仕事が遅くて仕方がない。そんなわけでもっぱら彼が
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