短歌と文法、詩と文法/非在の虹
もう以前のことだが、足立巻一氏の名著「やちまた」をある驚きをもって読んだものだ。
「やちまた」は語学者、本居春庭の評伝であるが、本居春庭とは、本居宣長の長男であり、日本語文法の発見者として初めてそのシステムを表した人である。
いま、発見者と書いたが、文の法則は、当然のことながら、春庭の誕生以前からあり、父の宣長も『古事記伝』を執筆中に形容詞の法則性について予感していたという。
それが、ようやく江戸後期にして一人の国語学者によって「発見された」という事実に、まず驚いたのである。
確かに、日本人は分析的な思考は苦手だといわれる。それにしても、無自覚すぎやしないだろうか。いや、話す、書くという行
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